いよいよ寒くなってきて引きこもりが捗る季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか(挨拶)。
とか言いつつ今年の12月はまたしてもほぼ毎週末出掛ける事となりそうなのですが。気候が寒けりゃお財布も寒くてホント救い様がない。

今回はいよいよ旅の主目的、阿里山突入編のお話。

・・・

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【2018.9.17 6:00 @ 台中市中区
この日も朝が早い。昨日深夜まで動き回っていた身体にはかなり堪えるものがある。
どうにか携帯のアラーム一発で起床してまずは洗濯物の回収。昨晩は滅茶苦茶流暢な日本語を操るお兄さんがフロントに居られたが、現在業務されておられるのは別の方。若干うろたえつつもどうにか「昨晩洗濯をお願いしたんですが」と言う旨をいつも通りクソガバガバの英語で伝える。こんなんでもちゃんと趣旨を汲み取って頂けるのでホント恐れ多いことこの上ない。

で、仕上がった洗濯物を受け取れたのは良いのだが。 なぜか洗濯物の上に鎮座している悠遊卡。お前昨日力尽きてポケット入れたまま脱いだんだろ! 
宿のお兄さん本当にありがとうございます……そして申し訳ありませんでした……

こうしてまた人知れずやらかしを積み重ねていた自分であるが、この裏でさらに大きなやらかしをぶちかましている人間が一人居た。
事態に気付いたのは大急ぎで仕上がった洗濯物を鞄にぶち込み、集合場所であるロビーに出ていったときだった。なんか一人足りてない。
足りてないのはれこ。今回の参加メンバー唯一の女性である。あっこれあかんやつや
この事態の何が面倒かと言うと、この宿は個室タイプではあるのだが男性エリアと女性エリアが完全に隔離されている。つまり携帯で電話なりメッセージを投げるなりして起きなかった場合もはや手出し不能。そして40分後の電車に乗れなかった場合今日の旅程は完全に崩壊する。

これはヤバいな……と言う雰囲気が流れ出してすぐに電話発信攻撃が始まるが案の定起きない。モタモタしていると本当に旅程が崩壊するのでフロントに助けを求めると、おもむろに立ち上がり女性エリアの扉の向こうへ消えていくお兄さん。
すると割とすぐにLINEが返ってきた。
「ごめんなさい今起きました」
「なんか知らんけどノックされて目覚めためっちゃ怖い」
そうだけどそうじゃない。

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何はともあれ無事に3日目スタート。高架化の絡みで建て替えられたばかりの台中駅をしばし眺める。脇に建っている旧駅舎は1917年建設だそうな。今回の旅行は煉瓦造りの物件に縁があるなぁ。

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眩しい朝日に照らされながら再びの旅立ち。駅のホームに差し込む光がとても綺麗だったのだが相変わらず切り取り方が下手……。

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乗り込むのは台中始発・6時43分発の自強号371次。特急列車なのできっぷを買って座席指定を受ける必要があるのだが、ICカードで乗車すると座席指定が受けられない代わりに割引運賃で乗れると言う制度が存在する。首都圏エリアで最近流行りの座席未指定券制度を思い出すが似てる様な似てないようなと言う代物である。
台湾の交通機関は基本的にかなり運賃が安いのだが、それにも関わらず「安いならそっちの方がいい!」と無座乗車に飛びついている辺りに改めて今回の旅行の限界度合いが伺える。

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「まあそうは言っても結構編成も長いしどうせ追い出されないっしょ」…などと高を括っていたのだが昨晩同様見事に当てが外れる。員林駅で席の本来の持ち主が現れたので自分とたっぺーは移動することに。しかしこれを被弾したのは我々2人のみであった。

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要所要所で區間車を追い越しながら自強号は行く。今回乗っているのはディーゼル車だが、加速し切って惰行走行に入った時に訪れる静けさが何とも言えず好きである。

【2018.9.17 8:03 @ 嘉義市西区
台中から1時間20分。嘉義で自強号を降りる。
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この古めかしく武骨な作りの屋根骨組み、滅茶苦茶良くないですか。広い朝のホームに放り出されるこの時が旅をしてる感を一番感じられるような気がする。

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ここから乗るのは今回の旅の主目的である阿里山森林鉄路。改札は台鉄と共用であるが、まだきっぷを引き取っていないので一度改札を出ることとなる。

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きっぷをまとめて予約していたおでんくんが窓口に並んでいる間、しばしその辺りを散歩して過ごす。さすがは阿里山の玄関口、大々的に推してるなぁ……と思いつつ振り返ってみると。

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「嘉義站空襲時旅客疏散路線圖」なる物騒な字面の掲示が。
いやさすがにその「空襲」じゃないよね???と思いつつしっかりと内容を読むと「Air Raid Evacuation Route Plan」の文字が一緒に躍っている。どう見てもその空襲ですありがとうございました。
中国語版Wikipediaの記述を見る限り駅舎の完成は1933年の様だが、台湾海峡危機やら何やらで相当ヤバかった時期の掲示物がそのまま残っていると言う事なんだろうか。今の所ここ以外でこの手の物件を見つけたことが無いので真相は謎。

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まだ時間があるので朝食を探しに行くが結局コンビニで適当に買って各々食べることに。相変わらず寝起きが悪くあんまり食べられないのでバナナを選択するが「サルかよ」などとあんまりにもあんまりな暴言を吐く輩が現れる始末。何だこの野郎。

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そんなことをしている内に時刻は8時50分。いよいよ駅構内へ舞い戻る。

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ふと左を向くと貨物列車が停まっている。「あの手のコンテナ以外の貨車も最近めっきり見ないっすよねえ」などとFNDと会話をしながら歩く。貨車に書かれた「P35CH」「幸福水泥公司」を手掛かりに調べてみるとどうやらこれはセメント積載用の貨車らしい。水泥でセメント、言われてみれば確かにと言う感じはしなくもない。

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いよいよ本日の主役、阿里山森林鉄路の列車登場である。
ディーゼル機関車が最後尾(山麓側)に付いて後押し、先頭に運転台付き客車が連結される編成となっていた。ちゃんと見てないけど運転台が付いているのではなく無線で指示を出しているだけなのかも?

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森林鉄路の列車が停車する付近はホームが狭いが、この隣に普通に台鉄の列車もやって来るモンだから入線直後の機関車付近などはエラい騒ぎである。ホームに警備要員の「危ないから下がれ💢」と言う怒号が響き渡る。中国語分からないので本当にそうかは知らんけど恐らくはそれ以外無いだろう。

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(この写真だと分かりにくいが)さすがは森林鉄道、車両がとても小さく細長い。乗ったこと無いけど四日市あすなろう鉄道とかサイズ感的には近いんだろうか。あちらは特殊狭軌(軌間762mm)らしいがこちらは一体何mm?

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そして車体側面には姊妹鐵路のステッカー。実は大井川鉄道って本線の途中までしか乗ったこと無いんだよなーと思いつつ眺める。静岡県出身者なのにねー……。

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9時丁度、嘉義駅発。奮起湖駅まで約46km、2時間20分の旅の始まりである。
さすがは軽量軌道と言ったところか、初っ端から滅茶苦茶に揺れる。なかなか鉄道でこの揺れを経験することは無いんじゃなかろうか。パッと見車内はマイクロバスみたいな席配置なのでそこだけ見れば納得できなくもないのだが(?)。
そんな阿里山森林鉄路だが車内自動放送はまさかの日本語対応。若干発音がぎこちない感じではあったが合成音声なのか、はたまた台湾の日本語が出来る方なのか。
しかし駅名の発音が思い切り中国語なので割と聞き取りづらいのだけは何とかならんものか。日本国内の英語自動放送も割と駅名は日本語発音のケースが多いような気がするが、いざ立場が逆になってみると何だろうなあ……と言う感じがする。「正しい日本語読みでの発音を知って欲しいから」と言う旨の会社側主張を読んだ様な覚えがあるが、もし利用者が聞き取れてないので有れば意味無いような……。

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嘉義駅発車から50分経過。竹崎駅を発車した辺りから列車は徐々に高度を上げ始める。

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かなり強烈なカーブと斜面にへばりつくような軌道が延々続いていく。一つ前の席が割り当てられていたれこはどうも爆睡している様で、ここまで来て勿体無いことを…と思っていたが自分もところどころ記憶が無い。慣れない土地で連泊だと疲れも溜まるしこればかりはどうしようもない。

【2018.9.17 11:20 @ 嘉義県竹崎郷奮起湖】
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終点・奮起湖到着。もう既に標高は1,400mに達しているが、目指す阿里山まではさらに800m以上標高を稼がなければならない。

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ここからは阿里山までさらに25km程軌道が続いているが、残念ながら災害のため運行休止中。バスに乗り継ぎさらに先を目指すこととなるが、ひとまずここで散策と昼食を取ることとする。

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と言う事で早速駅に隣接する車庫へと吸い込まれていく一行。

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中には蒸気機関車が保存されている。この機関車、実際に阿里山森林鉄路で活躍して現在は退役しているものらしい。ぱっと見は何の変哲もない機関車のように見えるのだが…

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なんか動力伝達機構がおかしい。傘歯車で車軸に伝達するなんて作りアリなのか?!シリンダーが直立してるし作りが変態過ぎる。
調べたところ、この機関車は山岳用に特化して設計された1910年代製の代物なんだとか(Wikipedia:阿里山森林鉄路の蒸気機関車)。これには機械工学科の者どうしFNDと盛り上がってしまう。この記事を書くために改めて普通の蒸気機関車の構造を再確認したがあまりの差に笑ってしまった。

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ちょっと気分が落ち着いたところで改めて奮起湖駅構内を見渡す。こんなのんびりした空気が流れているけど今日は月曜日なんだよなぁ。

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車庫裏手から外に出る。バス乗り場の場所を確認してからいざ昼食へ。

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周囲の景色を撮りながら歩いているので大抵自然と最後尾を歩くことになり、その写真には同伴者の背中が大抵写ることになる。こうやって見てみるとちょっと笑ってしまう。

と言う事でこの日の昼食は奮起湖大飯店で奮起湖弁当である。日本円で700円近くと、台湾の食事としてはかなりお高めだが非常に美味しい。おかわり自由のスープと一緒に貪り食うように完食。

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左端に写っているのがどうもメニューを開発した方らしい。「これ淡水で見た真理大学のアレじゃん!!!」などと盛り上がり再現写真を撮ったりしたがあまりにも内輪ネタが過ぎるので以下省略。

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猫に気を取られつつもどうにか無事バスには間に合う。いざ阿里山へ。

【2018.9.17 13:40 @ 嘉義県阿里山郷 阿里山転運站】
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阿里山公路を爆走すること約40分、いよいよ阿里山到着。
着いたのは良いが思いっきり霧の中で景色など何も見えやしない。エラいタイミングで来てしまったモンだ。

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宿はこの阿里山国家森林遊楽区の中にあるが、このゲートで入園料が徴収される。どうも公共交通機関で来たかそれ以外かによって料金が違うようなのだが、我々はここまで例によって各種ICカードでバスに乗車している。きっぷの半券等、証拠物が何もないことに若干の不安を持ちつつゲートへ向かうが、どうにか前者扱いの料金徴収で事が済んだ。後者扱いだと倍近く取られるのでこの差は大きい。

ひとまず荷物を投棄すべく宿へ向かって歩く。霧の中一体どこへ向かってんだか若干謎な雰囲気が出始める中、何やら遠くから音楽が聞こえ始める。新幹線に乗るとよく聞いたような気がする音楽が。これは……
急ぎ足でその方角を目指してみると おまたせ 台湾のゴミ収集車にまさかの阿里山で初邂逅!

何故台湾のゴミ収集車に過剰反応するのか、と言えば大体これのせいである。

「この界隈では"乙女の祈り"より"東海道新幹線のアレ"と言った方が通じるの、本当に理解に苦しむ」とはおでんくんの弁。実際何も間違ってない。

さて今晩のキャンプ地は(宿曰く)10人用の大部屋である。 10人部屋とは言ってもベッドは5つと言う殴り合い不可避な部屋だったのだが、実際入ってみると無理矢理に6つのベッドが配置されていたので無事に平和な夜が訪れることとなった。
しかしこの宿の予約を手配したのは自分なんだが、泊まるのは全部で6人って事は宿側に伝えてあったんだっけか。うーん…???

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荷物を投棄したところで阿里山駅へ舞い戻る。先ほどまでの雨が止み、嘘のように霧も晴れて見事なお散歩日和である。

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林務局作成の地図を見ながらお散歩ルートを検討する。現在地・阿里山駅からはさらに高所へと向かう沼平駅方面と、今朝我々が発った嘉義へひたすら下っていく神木駅方面の2方面に列車が発着している。今回は後者の列車に乗り、神木駅からひたすら歩いて宿へと戻って来る一周コースでお散歩を楽しむこととした。

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ここまで登って来るといよいよ本格的に雰囲気は森林鉄道。駅構内に停まっている貨車と客車が大井川鉄道の千頭駅を連想させてなんだか懐かしい気持ちになる。

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…そして全員さっさと列車に乗り込んだのを見計らって余計なことを始める(大体こいつのせい)。どうしても一回こうやって旅先でデレステのAR機能使って遊んでみたかったんだ。そして列車に乗り込むと「絶対やってると思ったwwwwww」と結局は全員に草を生やされる羽目に。

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15:45頃、阿里山駅発。再びの霧の中を列車が進む。
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阿里山駅から神木駅までは1駅10分くらい。路線はここでスイッチバックを行い嘉義方面へ下っていくが、この先は先述の通り災害のため不通。今日の地点で乗車できるのはここまでであった。

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駅を出て阿里山駅方面へ向けて歩いていく。この付近は2,100-2,200m程度の標高のはずなのだが、この森の雰囲気と植生は日本の普通の森林か高原エリアのそれに似ているような気がする。緯度が低く気温も高い分森林限界のラインなども大分異なっているんだろうか?

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案内板によればこの木がこの付近で最高齢のものらしい。樹齢2,000年と言う事だが、丁度横に写り込んだ人と比較するとその巨木っぷりがよくわかる。

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30分ほどで阿里山受鎮宮に到達。森の中の遊歩道はここまでであった。

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そして受鎮宮をバックにたっぺーに太極拳っぽいポーズを取らせて遊んでいたらこの仕打ち。もうこの旅で何度目か分からないが「ウッソだろお前?!?!」と叫ぶ羽目になる。
しかし冷静に考えてみれば何ということは無い、PC取り込み済みの写真をもう4カ月分近くメモリーカードから消していないというズボラっぷりが招いた事態であった。しばらくの間、ひたすらとっくの昔にPCへ取り込んだ写真を消して回りながら歩くこととなる。

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霧が晴れたり雨が降ったりで兎に角忙しい土地である。晴れてくれさえすれば高山の景色はひたすらに美しい。

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しかし視点を変えてみるとなんだか良くないものも見えてしまう。

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どう考えても落石除けが途中で押し潰されている気がする。地図を見る限り、これは神木駅から先の嘉義方面へ下っていく森林鉄路のものでは無かろうか。路線が寸断されたのは2009年夏の話らしいが、ここまでド派手に施設が破壊されているのでは9年経っても不通のままなのは致し方無いことだと思える。

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17時20分、阿里山駅エリア帰着。これにて3日目終了。

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再度宿を出て近くの料理屋まで足を延ばし、鍋で夕食を取った後はさっさと就寝体制に入る。明朝の起床予定時刻は朝4時前である。
シャワーを浴びるれこ、トイレに行きたいが中に入れないので苦悶の表情で早く出るよう懇願する某、と言う光景が展開される大部屋に当事者以外死ぬほど笑いながら修学旅行のごとき夜が過ぎていった。

【旅程終了までのこり48時間】
<4日目へつづく>


◆ この記事の続き
絶対にやらかしてはいけない台湾ツアー120時間に行ってきた話(その5) (2019-1-7)